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落合から世界へ

染色の未来

落合から世界へ

日本のオリジナリティーは伝統工芸にある

対談

渡邊 私が手がけている「YonoBi」というブランドのデザインコンペをやったのが2002年の ことです。デザインと伝統工芸を結びつけて、日本のオリジナリティー表現できる商品を開発しようと企画していました。さまざまな分野の伝統工芸組合に協力 を呼びかけて、最初に手を挙げてくれたのが二葉苑でしたね。

小林 渡邊さんからお話があったのは実は今回の「江戸染色工房・再生プロジェクト」を構想 し始めた頃でした。着物を染めることが仕事ですが、着物流通の下請けではなくて、一つひとつの布を大切に染めて、たくさんの人たちに気に入ってもらえる 「染屋」になりたい。その思いを強くした時期です。染屋である以上、染めたものが着物になることはうれしいものです。でも、染色の可能性はそれだけではあ りません。着物以外でも生活の中に取り入れて楽しい商品というものができるはずだと考えていました。

渡邊 当時はインテリアは欧米などからどんどん良いものが入ってきて、「やっぱりオリジナリティー のあるものでなければ海外では評価されない」ということを強く実感していました。「インテリアや生活文化を提案していく上で世界と戦っていけるものは何 か」と考えたとき、一つの答えが伝統工芸です。調べてみると、伝統的工芸品の生産は1974年がピークで、2000年くらいには売り上げが半分くらいに なっていました。後継者問題もあり、停滞していました。私は危機感を覚えましたね。

小林 私が先代から「染の里 二葉苑」を継いで、江戸染色や伝統的な作品を見たときに、やはり 「何かが足りない」と思うようになっていました。街を見ても着物を着ている人をほとんど見かけません。「新宿区・ミニ博物館」として一般の方々の見学を受 け入れてはいましたが、もっとたくさんの人に見てもらいたい、もっと染色の良さを知ってもらいたいという想いでした。

伝統技術という「宝」を活かしたい

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渡邊 伝統の技術はあっても、生み出される商品が、現代の生活や消費者の志向に合っていないのだろ うというのが結論でした。ならば、今の時代に活躍するデザイナーの感性を生かして、そこに優れた伝統技術で物づくりをすれば、市場にもインパクトを与える ことができるのではないかと考えました。

小林 まったく同じ想いです。ですから、自分のところでかんざしやがま口などの雑貨を作り始めました。でも染屋が作る商品というのはテーブルクロスやテーブルセンター、袱紗などしかありませんでした。そこをなんとか打ち破りたいとチャレンジしました。

渡邊 実は当時、江戸小紋、江戸更紗のことをあまり知りませんでした(笑)。すでに二葉苑は、布と アクリルという異素材を組み合わせた商品をプロデュースしていましたから、それを拝見したときには「こういうこなし方もあるのだな」と感心したものです。 布を使用したものといえば、テーブルセンターや袱紗などしかイメージがなかったものですから、正直言って驚きましたよ。

小林 ただ、商品にすることはできるのですが、そこは素人がやることです。デザインや素材の使い方など、素人の延長線上にあるものばかりでした。和がブームで、その流れにも乗ったのでしょうが、本当の意味で江戸染色をアピールする力にはならないと考えていました。

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渡邊 会社にお邪魔したとき、本当にいろいろなもの見せていただきました。染物のバレエーションはもちろんですが、「型」一つを見ても、信じられないくらいの種類があります。私は「これを生かさない手はない」という意を強くしました。

小林 「宝の持ち腐れ」ということはわかっていたのですが、それをどう生かしていくのか、どうすれば新しい分野にチャレンジできるのかは、皆目見当もつかない状態でしたね。

渡邊 最初に取り組んだのがトレーとバッグでしたよね。トレーは小紋柄をアクリルで挟んで、その柄が見えるものでした。バッグは二葉苑に残っていた型を使い、新たな色で染めた布を使用しました。

小林 最初は驚きましたよ。これまで作っていたものとはまったく違うのですから。一つの柄でも色使いがまったく違う。それこそ別物を作っているような印象でした。生き返るというのではなく、まったく新しいものが生まれたという、感動にも似た気持ちでした。

渡邊 いい色が出ましたよね。

小林 色を聞いたときは、本当にショッキングでしたよ。こんな色で染めるのかと。でも、自 分自身がワクワクして興奮気味だったことを覚えています。当時、プロデュースをしている人自体が珍しかったですよ。今では着物地を使った商品が出てきた り、帯地でバッグなどを製作したりするクリエーターが出てきましたが、当時としては少なかったと思います。

渡邊 そうですね。今は、いろいろな人たちが真剣に「和」に向き合うようになりました。ビジネスとして取り組むというのは本当に最近のことです。

デザインと技術の融合が新しく未来を切り拓く

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渡邊 若い人たちは「和」を新鮮に見ていますね。作り手もコアの部分は守りながら、新しいものを作り出す。若手の人たちにはそういう人が増えています。

小林 和は決して古臭いわけではありません。カッコいいととらえる人もいます。

渡邊 そう、和がカッコいい。それは当たっていますね。

小林 カッコよさは見た目だけではなくて、もっと心の部分のカッコよさがあるのかもしれません。

渡邊 デ ザインの力は必要です。それが商品となり、循環していくことが大事です。いいものを作っ て、分かってくれる人に売る。バックグラウンドを理解していただいて買っていただく。そういう市場はあると思います。商品の背景を理解し、そこに価値を見 だす人はするし、作り手や売り手もそうしたストーリーをもっと打ち出していくことも大事ですよね。

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小林 染屋でできる限界はあります。ただ、自分たちもリスクを負いながらチャレンジしていくことが大事なのだろうと思っています。本当のデザイン、本当の商品開発という部分が大事ですよね。

渡邊 これからもいろいろな可能性があると思っています。伝統工芸など作り手の歴史や技術を理解できる生活者は増えていると思います。

小林 衣食住という言い方がありますが、着物という衣から拡大して、住までを提案できるよ うになりたい。ハードルは高いですが、チャレンジしていきたいと考えています。全米で展開しているショップから、江戸小紋の柄を使いたいというオファーが 届きました。江戸に生きた人々の「心」を海外に伝えていくことにも挑戦したいと思っています。

渡邊 そうですね。どんどん新しい発想の物づくりしたいと思っています。

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