江戸小紋 制作工程

【 型紙づくり 】
江戸小紋は和紙を柿渋で加工した型紙を用います。まずはこの型紙を作ることが重要で、しなやかな強さが必要です。純正の和紙に柿渋を塗ることで、彫られた型紙が温度や湿度などで伸び縮みして動くことを防ぐと同時に、耐水性を増して強度を高めます。
柿渋を塗った和紙を長い時間をかけて乾燥します。ときには数年寝かせることもあります。また、乾燥の時間を短縮するために燻すという手法がとられることもあります。
型紙は主に三重県の伊勢で製作されています。江戸時代、紀州藩から型売り業者に特権が与えられ、そこから「型紙といえば伊勢」と言われるように技術が発達し、受け継がれていきました。現在でも、江戸小紋に使われる型紙は伊勢から運ばれてきます。

【 型彫り 】
文様や意匠に従って、型を彫っていきます。いかに精密に、正確に彫ることができるかが美しい染物に仕上がるかどうかの大きな鍵を握ることになります。
型彫りには、錐彫り、突き彫り、縞彫り、引き彫り、道具彫りなどの手法があります。柄によって彫り方が異なり、使う道具も変わってきます。

▼錐彫り
型彫りの中ではいちばんオーソドックスな技法で、「行儀小紋」「角通し小紋」「鮫小紋」といった基本的な小紋柄をはじめとして、多くの柄がこの技法で彫られます。小さな三日月型の刃を型紙に垂直に当てて、回転させることで小さな穴を彫っていきます。最初から最後まで同じ大きさで彫っていくことが職人技で、熟練した技が必要になってきます。特に細かい柄を表現したものを「極」と言いますが、これは一寸四方(約3センチ四方)に900~1000個の穴が彫られています。

▼縞彫り
シンプルな縞模様を染める時に使用する型紙を製作する技法です。
型紙の上に定規を当てて、彫刻刀を一気に手前へ引いて縞の柄を彫っていきます。狭い幅で均等な間隔で彫っていく作業は単純ですが、これも職人の腕が必要になります。
縞の細かさによって、「千筋」「万筋」「微塵筋」と呼ばれています。最も細かいものでは、一寸の幅に33本の縞を彫ったものもあります。

▼突き彫り
複雑な絵模様を彫るために使われる技法です。6~8枚重ねた型紙の一番下の紙まで綺麗に刃が通るよう、小さな穴のあいた「穴板」と呼ばれる板の上に型紙を置いて彫っていきます。

▼道具彫り
刃先の形が花や亀甲などひとつの文様の形になっている道具を使って彫っていくものです。
単純に彫っていくばかりではなく、
様々な形の刃を組み合わせることで、複雑な文様を彫り出していくことができます。

【 染付け 】
彫られた型紙を使って、布地に染めていく工程です。
約6~7メートルの一枚板の上に白生地を貼り付けます。ちょうど着尺の半反分の長さで染付けの作業をしていきます。
米糠を主とする防染用の糊を、生地に置いた型紙の上からへらを使って均一になるように塗っていきます。この糊が生地について、後の工程で色が染まらない部分になります。型紙は左右数十センチくらいですから、柄のつなぎ目はとくに慎重になります。ここでも職人の腕が問われます。
柄となる部分に防染糊を塗り終わると、次に地色を染めていきます。染料を混ぜた色糊を、生地幅くらいの大きなへらで全体に塗っていきます。

【 洗い 】
地色を染め終わると、水洗いをして糊を落とします。昔は川で反物を流して、それが風物詩ともなっていました。
地色の部分が色に染まり、糊の部分が染まらずに白く残って小紋独特の柄が出来上がります。

【 蒸し 】
色を定着させるための工程です。蒸し器の中で加熱することで、生地を傷めずに色が繊維に入り込んでいきます。