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染の里 二葉苑

染色、江戸更紗

江戸更紗 東京都伝統工芸品

江戸更紗

江戸の人々は、エキゾチックな更紗に魅かれた

神経を研ぎ澄ます
江戸更紗「江戸更紗の文様は、人物、鳥、草花など図案化して、トーンは渋く、エキゾチックな感じがするものが多い。型紙一枚一枚、丁寧に染色刷毛を使って染め上げるので根気と技術が必要なのである。それだけに立体感が出て、色の深みが感じられる。」と、小林文次郎はその著書「染色 小林文次郎の世界」で語っています。
通常で30枚、より精密なもので300枚もの型紙を使用する江戸更紗は、染色技術の「極み」ともいえるものではないでしょうか。外国から輸入された文化に対して職人たちが努力と研鑽を重ねた姿が思い浮かびます。

インドに起源
更紗は 今から3000年以上も前、インドで発祥したといわれています。語源はジャワ島の古語「セラサ」、インド語で「美しい布」を意味する「サラサー」など諸説があります。
更紗とは、もともと、木綿に花や人物などを五彩(臙脂、藍、緑、黄、茶)によってカラフルに染め上げた模様が特徴です。木綿が素材の性質上、染色しやすかったことで生まれたと言われています。
インドで生まれた更紗はペルシャを経てヨーロッパへ、東は中国、南はタイやジャワに伝わり、「海のシルクロード」を通って日本にやってきました。
【インド更紗】
現在でもインドで染められています。「クリシュナ物語」などインドに伝わる伝説をモチーフに、それを文様化したものが多いようです。
【ペルシャ更紗】
中世以降、ペルシャ(現在のイラン)はインドとの交流が盛んになり、更紗の技術を持ち帰って、インド更紗とほぼ同じ技術で作られるようになりました。ペルシャ更紗は自然を題材にしたものが多い。
【ジャワ更紗】
バティックとも言われている染色です。ロウケツ染で、デザインはインドの影響を強く受けているのが特徴です。

日本の職人たちが魅かれた『古渡更紗』
独自の技術で渋みのある江戸更紗を作り上げた

室町時代に日本へ
江戸更紗日本に更紗が伝わったのは、室町時代です。ポルトガル、スペイン、オランダなどの南蛮船によってもたらされたと考えられています。それまで見たこともない柄の布を見て、多くの人たちが驚いたことでしょう。 しかし、とても一般庶民の手が届くものではなく、南蛮渡来の舶来品として武家でも権力者たちが愛用し、茶人の間で「名物裂」として珍重されていました。
日本で更紗文化が花開くのは江戸時代のことでした。独特の異国情緒が「美しい更紗を何とか染め上げてみたい」という職人の心を揺さぶったのでしょう、職人たちは日本の型染技術を駆使していきました。
染料も、インドと同じものがない中で顔料が使用されました。日本人の手によって作られても、和風にはならなかったのが面白いところです。控えめを美徳とする日本人の感覚ではなく、極彩色を用いて過剰な彩色を施し、独自の花鳥風月を表現していきました。更紗は日本各地に広まりました。
【天草更紗】
九州の天草(熊本)で江戸時代の文政年間に生まれた更紗です。伊勢で彫られた型紙を使用して染色されました。
【鍋島更紗】
九州の鍋島藩の保護を受けて発展しました。木版と型紙を併用した染物で、明治時代に一時途絶えましたが、現在また復興されています。
【京更紗】
京友禅のような華やかな色づけが特徴で、型紙を使って染色されます。


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侘と寂を表現する「江戸更紗」
江戸更紗江戸時代の終わり頃、江戸で型染めによる優れた更紗職人が江戸に現れて、江戸更紗の名前が広がっていったと言われています。
江戸更紗は、異国情緒を漂わせながら、しかも深い渋味のある味わいを持つのが特徴で、江戸という風土と粋な江戸人の美意識が表現されて発展してきました。
「京更紗」は鮮やかな色合いが特徴ですが、それは京都の水が軟水で、華やかな色が出せるためです。
一方、江戸は神田川をはじめとして、水は硬水です。水中に含まれている鉄分が、染め上げるまでに化学反応して渋い色になります。そのためここに江戸更紗独特の渋味が生まれます。「侘」を感じさせる味わい、「寂」を感じさせる枯れた色合いが特徴です。 各地の更紗は次第に姿を消していき現在、我が国で産地を形成しているのは東京の江戸更紗だけです。

一本の糸目、
一つの色にこだわる複雑な製造工程


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一つの線に複数の型紙
江戸更紗江戸更紗の特徴は、「追いかけ彫り」と「追いかけ染め」の技法にもあります。「追いかけ」とは、一つの紋様を数枚の型紙に分けて彫り、摺り上げていく手法です。
三角形の図案の線(糸目)を染めるときには、3枚の型紙が必要となります。型紙は線をくり抜きますから、一部分でもつながっていなければ抜け落ちてしまいます。ですから、一枚に一部分だけ彫り切らないところを残します。そうすると、一枚の型紙で一部分だけ染められないところができます。それを補うために異なった部分を彫り残して3枚用意するということです。
こうした型紙を彫ることを「追いかけ彫り」と言い、それを染めていくことを「追いかけ染め」と言います。
この後、本格的な染色の作業になります。簡単に 製造工程を紹介していきましょう。

未来へと広がる更紗の可能性
こうして染め上げられた江戸更紗は、アジアと日本が入り混じった独特の風合いをもった布に仕上がります。
インド更紗から日本独自の技術で生み出された江戸更紗の存在感は、見る人、身に着ける人に感動を与えてくれます。その時代に生きた人々を魅了し、職人たちの技術が昇華していったように、現代に生み出される江戸更紗も、今を生きる人々の中で育まれています。
今や、江戸更紗は世界的にも高い評価を得ています。もともとは着物として、また帯として受け継がれてきたものです。しかし、世の東西を問わず、江戸更紗はさまざまな分野で活用されてきています。タペストリーや椅子の張り地などのインテリア、アクセサリーや生活用品のあらゆる場面で独特の味を出した商品も開発されています。江戸更紗には限りない可能性があります。

一つひとつの工程に気が抜けない
江戸更紗は下図となる図案を描くことから始まります。
図案は日本に伝来してきた頃の唐草模様に現代の感覚を取り入れながら、自然の風物や人間などをモチーフにしていきます。そして、個々の模様にどのような色彩を施していくか、またどのように分解していくかを考えながら型紙を彫っていきます。江戸小紋同様、柿渋で固めた型紙に、たった一本の小刀で全ての紋様を彫り込んでいきます。
この後、本格的な染色の作業になります。簡単に製造工程を紹介していきましょう。